このノートは、主に躯幹(トルソー)部分の muscle の重なり(穿插)と簡単な骨格構造に関するものです。英語のノートは後日更新予定です。参考文献は、上海人民美術出版社出版の『牛津芸用人体解剖学』(Eliot Goldfinger 著、李慧娟 訳、2018年8月第1版)および電子工業出版社出版の『芸用人体解剖』です。
本文は美術解剖学を目的としているため、外観に影響を与えない深層筋には触れず、muscle の重なりについても定性的な説明を主としています。誤りがあればご指摘ください。
小角度・上半身の簡略化
以前のノートで述べたように、頭部、胸郭、骨盤、鎖骨、臀部、肩甲骨、肩関節(shoulder ball)などを簡略化して捉えます。以下のいくつかのポーズを用いて、上半身の muscle の重なりを観察します。まずは、以下のような形で描き起こします。
胸鎖乳突筋
まず頭頸部についてですが、頭頸部には多くの複雑な muscle が存在するものの、外観に直接大きな影響を与えるものはそれほど多くありません。その中で、Sternocleidomastoid (胸鎖乳突筋, Stm) は非常に重要な muscle です。Sternocleidomastoid は、clavicular head (鎖骨頭) と sternal head (胸骨頭) の2つの部分に分かれます。
胸鎖乳突筋 - 胸骨頭 (SC)
起点:Mastoid process (乳様突起、耳の後ろあたり)
終点:Sternum (胸骨)
模式図:
胸鎖乳突筋 - 鎖骨頭 (SS)
終点:Clavicle (鎖骨)
外観上は、特に首を回した際に sternal head がより顕著に見えます。
斜方筋
Trapezius (斜方筋, Tr) も頭頸部において非常に重要な muscle です。外観上も非常に目立つ大きな muscle です。
起点:Skull base (頭蓋底)、頸椎(第7頸椎 C7 の位置に注意)
終点:Clavicle (鎖骨) 外側1/3、Spine of scapula (肩甲棘) 上縁、肩甲棘結節(肩甲棘の1/2程度の位置)、Thorax (胸郭) 下部
菱形筋
Rhomboids (菱形筋, Rh) は rhomboid major と rhomboid minor に分けられますが、実際にはほぼ一体化しているため、一つの muscle として扱っても問題ありません。また、Rhomboids は深層筋(deep muscle)であり、体表からはほとんど観察できません。正面からは見えません。
起点:Nuchal ligament (項靭帯) 下部(頸椎の末端、C7付近から)第5胸椎まで
終点:Medial border of scapula (肩甲骨内側縁)
模式図:Rhomboids は Trapezius の下に位置します。見やすくするため、Trapezius の透明度を下げています。
棘下筋
Infraspinatus (棘下筋, In) は背部の muscle の一つです。肩甲棘の下側に位置することからその名がつきました。
起点:肩甲棘の下方
終点:Greater tubercle of humerus (上腕骨大結節) の中部
模式図:Infraspinatus も Trapezius の下に位置します。見やすくするため、Trapezius の透明度を下げています。
大円筋・小円筋
Teres Major (大円筋, TMa) と Teres Minor (小円筋, TMi) は、肩甲骨と humerus (上腕骨) の間を連動させる muscle です。Infraspinatus と Teres Major が Teres Minor を挟み込むことで、背部の infraspinous 構造を形成します。注意点として、Teres Minor と Infraspinatus は humerus の大結節の同じ側に付着しますが、Teres Major は humerus を回り込んで biceps (上腕二頭筋) の位置で終わります。つまり、Teres Major と Teres Minor/Infraspinatus は humerus を挟み込む形になります。
小円筋 (TMi)
起点:肩甲骨外側縁の約1/2の地点
終点:Humerus 大結節の下側面
Teres Minor も体表に見える部分はごくわずかです。
大円筋 (TMa)
起点:肩甲骨下角
終点:Humerus 上の biceps 付近
胸大筋
Pectoralis Major (大胸筋, PMa) は、鎖骨の下、ribs (肋骨) の上に位置する非常に目立つ体表 muscle です。全体で一つの muscle ですが、その重なり構造は clavicular part (鎖骨部)、sternocostal part (胸肋部)、abdominal part (腹部) の3つのセクションに分けられます。
鎖骨部
起点:Clavicle (鎖骨) 下縁(内側1/2部分)
終点:Humerus (上腕骨) 前側
胸肋部
起点:Sternum (胸骨)
終点:Humerus 前側。clavicular part の下側から入り込み、より高い位置に停止します。
腹部
起点:Ribs (肋骨)
終点:Humerus 前側。sternocostal part の下側から入り込み、より低い位置に停止します。
三角筋
Deltoid (三角筋) は肩部で最も目立つ muscle であり、体表からその動きをはっきりと確認できます。Deltoid の3つの束は、鎖骨 - 肩峰 - 肩甲棘のラインに沿って起始し、humerus の外側に停止します。前部(anterior)は鎖骨外側1/3から、中部(lateral)は肩峰から、後部(posterior)は肩甲棘外側から起始し、すべて humerus 体外側の中点に収束します。
起点:鎖骨外側1/3、肩峰、肩甲棘下縁
終点:Humerus 体外側の中点
腹直筋
Rectus Abdominis (腹直筋, RA) は腹部の主要な体表 muscle です。いわゆる「8パック」は、腹直筋の左右4つずつのセグメントを指します。最下部のセグメントは大きく、さらに2つに分かれることもありますが、体表からはほとんど見えません。左右のセグメントは中央の linea alba (腹白線) で合流し、external oblique (腹外斜筋) と境界を作ります。linea alba は胸骨下部から pubis (恥骨) まで伸び、臍(へそ)の下で徐々に消失します。
前鋸筋
Serratus Anterior (前鋸筋) は体側に位置し、鋸の歯のような形状からその名がつきました。体脂肪率が低い場合に特によく見えます。基本的には肋骨に沿って分布し、上部8〜9本の肋骨から起始しますが、他の muscle に覆われているため、通常は下部の3〜4つの束だけが体表から確認できます。
起点:上部8〜9本の肋骨に沿って分布
終点:肩甲骨の内側縁(脊柱縁)
腹外斜筋
External Oblique (腹外斜筋, EO) は Serratus Anterior と隣接し、互い違いに組み合わさっています。Rectus Abdominis とも隣接していますが、交差はしていません。
起点:下部8本の肋骨
終点:解剖学的には linea alba に停止しますが、描画の際は Rectus Abdominis に遮られるため、腹直筋の外側で終わると解釈して差し支えありません。
背闊筋
Latissimus dorsi (広背筋, L) は背部で最も広大な muscle です。Trapezius の下に位置し、External Oblique の背面を覆い、Infraspinatus、Teres Minor、Teres Major の重なりを露出させます。Latissimus dorsi は背面から脇の下へと回り込むため、発達している人は正面からでもそのアウトラインを確認できます。腕を上げた際に特に顕著になります。
